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関崎副会長のその後 関崎副会長と立村評議委員長に50の質問 立村評議委員長のエピローグ

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青潟大学附属・水鳥中学生徒会シリーズ 55555カウントリクエスト作品
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■葉牡丹の花・その後〜ゴールデンウイーク・関崎副会長と立村評議委員長

原稿用紙45枚弱





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■登場人物 関崎乙彦・立村上総
時期 四月下旬


関崎乙彦は悩んでいた。 
ゴールデンウイーク前、内川生徒会長……実質は元陸上部の後輩……から差し出された、勧善懲悪テレビドラマ丸写しの台本に。

「正義は負けない悪は勝つ! 生娘奥女中を狙う、悪代官の罠!」

 ──これを昼間っから校内放送で流せっていうのか!
 残念ながら乙彦には、内川を呼び出して怒鳴りつけることはできない。きっと総田あたりに耳打ちされたに違いない。 ゴールデンウイーク直前に渡しておけば、休み中にひとりで怒るなりわめくなりして発散してくれるからって。
 ──あいつも、総田に洗脳されやがって! こんなはずじゃなかった。誰よりもひたむきで、朝一番に部活の練習に来て準備して、帰りも一番最後まで残って片付けている。そんな真面目な奴だった。 乙彦の知っている内川とはそういう奴だった。だから、生徒会長として自分よりも人望だて得られるだろう。そう安易に考えていた。
 ──総田の奴さえいなければ!

 どうせ受験勉強があるのだから、ゴールデンウイークどこに行くでもない。勉強だひたすら。青大附高に進学するためには、水鳥中学学年トップレベルで 満足していてはいけないのだ。青潟大学附属高校〜附属中学の補充人数プラス三十人くらいのはず。青潟市のトップクラスにあたる生徒たちがみな、向かっていくのだから安穏とはしていられない。一応両親にも、この春休みに進学したいという気持ちを打ち明け、快くOKをもらった。
「おとひっちゃんも、雪辱戦だもんなあ」
 本当は公立の青潟東高校に進学してほしかったに違いない。学費のことなんかを考えてもそうだろう。でも、乙彦には、納得いかなかった青大附中試験での屈辱を晴らすため、どうしても決着をつけなくてはならない。

 ──しっかし、六月の校内放送ドラマ、って、こんなことやってどうするんだ? 第一誰がやるんだ? 
 理由はわかっている。二月〜三月にかけて、青大附中評議委員会との交流会……厳密には交流準備会……が行われたことがきっかけだ。生徒会活動よりも委員会活動の方が活発な青大附中において、実質的な活動を行っている青大附中評議委員会と付き合いが生じるのは自然なことだった。がしかし。立村評議委員長曰く、

「青大附中評議委員会は、通称『隠れ演劇部』みたいなものなんだ」

 はないだろう!証明資料も聴かせてもらった。『忠臣蔵』。あと見せてもらった。『奇岩城』。水鳥中学の学校祭で行うような『彦一とんち話』とは違う。ちゃんとビデオを設置して、衣装や舞台も設置し、台本も自前。男女が入り乱れるすさまじい世界だった。同じ中学生でどうしてこうも違うんだろう。ため息が出た。きっとこういう活動をしたら、水鳥中学の学校祭も盛り上がるだろう。自分が役をもらわないという保証さえあればいくらでもやる。

 が、しかし。これをやれっていうのか? 
 ──あわや奥女中、悪代官さまに帯をほどかれ、いやーん、と叫ぶ。
 しっかり、あいつの直筆だ。

 ──内川、頼む、正気に戻ってくれ!

 繰り返すが今はゴールデンウイークだ。
 いつもだったら雅弘を誘ってバッティングセンターで一汗流してくるんだが、あいつのうちは書店。しっかり手伝いさせられるんだそうだ。あいつもほんとに、受験勉強しているんだろうか。青潟工業高校を目標にしていると言っていたけれど、あれだけちょろちょろしていたら間に合うものも間に合わないだろう。しかもだ。

 ──別にかまわねえけどな。少しは落ち着けよ。

 一時期、あの雅弘が青大附中の女子に熱を上げまくった挙句、両方の立場をずったずたにする事件を巻き起こした。
 春休み前のことだった。乙彦自身もこのことについては責任を感じていたりする。雅弘がどうして、こういう常識外れなことをやらかしたのか、理由がおぼろげにわかったからだった。
 ──おとひっちゃん、あの子のこと嫌いだろ?
 なわけねえだろ! と怒鳴りたくても怒鳴れなかった。
 自分なりのけじめとして、あいつを制裁した。でも、それがいいことだったのか悪いことだったのかはわからない。わからないから、まずは身体を動かした。毎朝、無理やり雅弘を連れ出して駅前あたりをゆっくり一週走る習慣をつけた。疲れさせてよけいなことを考えないようになればいいだろう、というのが乙彦の考えだったし、なによりも。

 ──水野さんのことだってあるんだろう。

 乙彦はもういちど、頭を振って台本を叩きつけた。
 気付いてないわけないだろう。真剣な顔をして雅弘を見つめ、
「関崎くん、佐川くんは、あの人のことが気に入っているのかしら」
 淋しげにつぶやいた、交流準備会お迎え時のことを覚えている。
「なわけない。雅弘はただの友だちだと思っているだけだ」

 ──関係ないだろ!

 よけいなことを考えている暇があったら、問題集だ問題集!
 青大附属に入るためには、遊んでいる暇なんでないんだ!
 親にも約束した。受かったら新聞配達のバイト代と奨学金でちゃんと学費を返すって。
 ただ受かるだけじゃだめなんだ。とにかく、トップで合格しなくちゃいけないんだ!


 と、いうことを今まで乙彦は雅弘に話していた。たいていふんふん言いながら納得顔していた雅弘だった。
 でも、その奥で奴は、きっとクールに流していたのだろう。あの事件以来、さらに乙彦は雅弘のことを侮れなくなっていた。
 精一杯守ったつもりだけど、あいつはもっと軽やかに、うまい方法を見つけてしまいそうな気がする。
 そう、内川のように。


 気持ちが落ち着かず、兄から借りたゲームウオッチをいじったり、雑誌をめくったりしているうち、ふすまがいきなり開いた。
「いきなり開けんじゃねえ!」
「電話だよ、おとひっちゃん」
 恭平が上トレーナー、下パジャマのずるずる姿で入ってきた。
「わかった、今行く。誰からだ」
 弟とはいえ、まだまだ幼い面している。小学六年の頃、雅弘もこんな顔していたっけ。
「知らねえ人。青大なんとかって言ってた」
 ──立村か。
 青大附属中学、評議委員長の奴だろう。乙彦は髪の毛をかき回しながら恭平の肩をぐっと叩き、受話器に向かった。関崎家ではプライベートなんて奴、ありゃあしない。
 

「あ、ごめん、立村です。今、時間大丈夫かな」
 腰の低い性格だ。大人しい奴だと、あの時までは思っていた。そうだ、真面目そうで大人しくて、人見知りしそうで、それでいて気遣いある奴。
 なんとなく初対面の時に「雅弘に似てる」と思ったことを覚えている。
「あのさ、もしよかったら今日、駅前に用事があって行くんだけど、この前の公園で会えないかな」
「別にいいけど、なんか用か? 交流会のことだろ」
「それもあるんだけどさ、まあ、俺もゴールデンウイーク、どこも行かないからさ。ほら、この前話しただろ? 俺のうち、色々事情があるんだ」
 父子家庭なのに、なぜか母が一ヶ月に一回泊りに来て家族団欒していく、という立村の家庭。この辺、理解できない。
「だから、ひさびさに関崎と話をしたいなって、ことなんだ」

 ──いい奴だよな、こいつも。

 いろいろあったこの二ヶ月。雅弘との微妙な距離、総田との相変わらずのバトル、内川の色気づいた謎。
 全く関係ないところで、発散したかった。しょうがない、今日は立村とあとでバッティングセンターに行こう。男たるもの、野球が苦手ってことはないだろう。

「わかった、今行くからな」
 品山から自転車でくるという立村のために、一時間後に待ち合わせ時間を設定した。

 野郎と逢うのだから、おしゃれをすることもない。青いトレーナーにジャンバー、ジーンズで家を出た。佐川書店の前を通ったが、今日のところは無視する。
 まさか、「これからどこに行くの?」と雅弘に聞かれて「ああ、お前をこの前ぶん殴った奴」だなんて言い辛い。
 洒落っ気を出す気はないけれども、ちゃんと洗濯したばかりのものにしてあるので、万が一、水野さんとすれ違っても大丈夫だ。女子は匂いがきついのが嫌いなのだと、あの日、こっそり教えてもらった。もう二度と、ああいう時なんてもてないんだろうな。と思う。用務員室から帰った時、ほんの少しだけふたりでおしゃべりができたこと、今の乙彦は自分の記憶力が勉強以外にも役立つことを、こよなく感謝していた。ああ、何回、思い返したことだろう。毎朝夜、夢にまで。

 立村はかなり息を切らしていた。
「悪い、時間早すぎたか」
「いや、大丈夫。とにかくベンチ確保な」
 まずは腹ごしらえということで、近所のコンビニでペットボトルのお茶とおにぎりを買って、ベンチに座るやいなや食いつき始めた。そうとう腹が減っていたのだろう。
 青大附中評議委員長と水鳥中学生徒会副会長としての社交辞令を終わらせ、さっそく立村の言葉を聞くことにした。
「あのさ、関崎、悪いんだけど、これに答えてもらえないかな」

 四つ折にした白い紙を取り出した。黒いかばんのチャックを開いた時に、中の整理整頓されている様がすっきり見えた。こいつ、野郎のくせにそういうところ神経質なのかもしれない。
「なんだ? それ」
「今さ、青大附中ではやっているんだ。うちの学校変でさ、担任が道徳の授業を利用して、『自分の内面を覗き込むために、以下100の質問に答えてみろ』ってな。去年もやらされてもううんざりしたよ。ほんっと頭に来るって言うかな。けど、こういうのが好きな奴も結構いて、今じゃあ、初対面の奴に挨拶代わりに渡す紙ってことで、必需品になっているんだ。青大附中生のたしなみなんだってさ」
 ──青大附中生か。
 ちりりと音がして、紙が破けたような気がした。もちろん気のせいだ。ぶちぎれて破るわけがない。
「今度、うちの学校の二年連中と改めて会ってもらう時に、関崎もこういうのがあれば、話が早いかなと思ったんだ。一応、俺がこの答えを預かっていくよ。関崎は直接答えてくれればいいよ。あ、ついでだし、俺も最新バージョンに替えるつもりでいるから、自分の分も作るよ」
 用意周到。立村の奴、しっかりとシャープまで取り出している。銀色の、どっかのブランドものだってことが、乙彦にも分かる。

 ──青大附中生のたしなみか。
  一言が重くて、胸に突き刺さる。本当だったら自分が今ごろいた場所のはず。未練なんてとっくになくしていたと思っていたけれど、立村と顔を合わせる機会が増えるにしたがって、どうしようもなくちりちりと燃える。立村が雅弘をぶん殴り、初めて水野さんとふたりで家に帰ったあの日。直後に両親へ土下座して頼んだこと。
「父さん、母さん、ごめん。うちが楽じゃないってことわかってるけど、やっぱり俺は、青大の附属高校、もう一度受けたいんだ!」

 今日の立村はブレザーではない。かなり裾の長い水色のカーディガンに、白い開襟のシャツ、細いタイをたらしている。
 細身の立村だからこそ、似合うのだろう。
 いつもブレザーを思わせるような着こなしを見るたび、乙彦はまた、自分の学生服姿のことを思い出した。詰襟の部分がちくちくして痛かった一年の春を思い出した。


……以下、関崎乙彦、立村上総のかけあいは続く。

〜次のページは「登場人物に捧げる50の質問」 さまから頂戴しました〜

 

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