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関崎副会長のその後 関崎副会長と立村評議委員長に50の質問 立村評議委員長のエピローグ

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青潟大学附属・水鳥中学生徒会シリーズ 55555カウントリクエスト作品
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■葉牡丹の花・その後〜ゴールデンウイーク
関崎副会長と立村評議委員長〜立村評議委員長のエピローグ


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■登場人物 関崎乙彦・立村上総
時期 四月下旬


エピローグ

 立村上総はため息をついていた。
 ゴールデンウイークは例によって、母の関係で手伝いに出かけなくてはならない。今度は三味線の会があるらしく、また裏方の手伝いをしなくてはならないのだそうだ。
 別にそれはいい。日舞と違って衣装を着替えたりなんなりしなくてもすむし、上総のすることといったら母の荷物番くらいだ。帰りはどんな理不尽な文句を言われようとも、品山まで送ってもらうつもりだ。うちに一晩、たぶん泊っていくに決まっている。
 関崎の答えを一通り読み直し、封筒に入れた。
 ──杉本 梨南様──
 住所と宛名を筆ペンで記した。こうしておくと怪しまれないで済む。いくら杉本の家族が上総のことを知っていたとしても、やはり男子からの手紙となってはなかなか取り次いでもらえないだろう。ちゃんと、母の名前を利用させてもらう。差出人のところには「時辻沙名子」と使わせてもらった。

 ──やっぱり、関崎はだめか。

 何度か電話で連絡を取り合い、四月に入ってから二回、ハンバーガー屋で話をしたりした。初対面の時からなんとなくうまの合う感じがしたというのもあって、ずいぶんさし行ったことまでしゃべってしまった。上総が現在父子家庭……いわゆる一般的なイメージとは異なるとはいえ……という環境のもと育っていることまで。単純にも関崎は「父子家庭」イコール「食生活が乏しい」イコール「こんど家に遊びに来て食事しろ」と誘ってくれた。上総がもともと料理には不自由しない腕を持っているなんて、知る良しもない。
 ──いい奴だよ。ほんと、関崎だったら安心なんだけどな。
 ひとりぼっちで関崎の書いたメモを大切に抱きしめ、空を見上げている杉本の姿。
 自業自得とはいえ、なんとかしてやりたかった。
 
 現在、杉本の置かれている状況は小康状態、と言ってよいだろう。
 一学年上がり、二年B組となった現在、評議委員は佐賀はるみに奪われた。上総自身もその辺は覚悟していたことだし、今の所佐賀がそれほど行動を起こしているようには見えない。もちろん、杉本としてはいろいろ言いたいこともあるのだろうが、桧山先生を含む男子連中が一切口を挟ませないようにしているらしい。また、皮肉なのだけど、杉本を一切、他の委員会活動に参加させないようにという目的で、B組の男子委員たちはいきなり女子に対して「レディー・ファースト」を行うようになったという。杉本を追い出すためならば、多少気に入らない程度の女子の行動は大目に見よう、という気持ちに、どうやらなったらしい。男子評議委員新井林健吾の本音も見え隠れしているのだろうが。
 杉本梨南は、B組の害獣として射殺されない代わり、無視されるだけの存在となった。
 しかたないことだ。と上総は思う。そうせざるを得なかった理由は自分にある。
 せめて、何とかせねば、と上総は毎朝、毎夕、杉本に声をかけていた。最初はずっと無視されていたけれど、
「今度、関崎に会ったら、何か聞きたいことないか? 聞いといてやるよ」
 の一言で、いきなり「50の質問」プリント用紙を押し付けられた。ぴとっと、ネクタイのところに、ほんとに「押し付けた」。
「本当に、関崎さんのお言葉だけお願いします」
 あきらめていない。三月の末、杉本は確かに、関崎から受け入れられない旨の返事を受け取ったはずだった。上総も詳しいことは聞かなかった。あとで清坂美里から確認したところ、関崎は精一杯なんらかの言葉によって、傷つけないように心がけていたという。誠実に、杉本のことを思い遣って。
 しかし、杉本にその言葉は届かなかった。耳をふさいで拒絶したのではない。杉本にとって、男子が自分に対して、誠実な答えを返すこと……たとえそれが交際拒絶だったとしても……は、今まで皆無に等しかったのだ。そういう行為をしてくれること、イコール、自分に好意を持ってくれている、イコール、いつかは自分を好きになってくれる。努力するだけのかいがある。そう判断してしまったのだろう。
「立村先輩なんかと違って、関崎さんは私にちゃんと礼儀正しい言葉を使ってくださいました。青潟東に行くのだったら、私も一緒です。ちゃんとあの方を追って、公立高校の試験をトップで通っていきます」
 すでに、桧山先生からも、附属高校への進学をやんわりと断られるような言い方をされていたらしい。その辺も杉本の話を聞いただけにとどまる。
 関崎が青大附高に来てくれれば、せめて一年だけでも杉本は見つめつづけることができるだろう。それに、関崎ももともとは青大附高を受験したさそうな顔をしていた。なんとなくだが、この三ヶ月ほどの付き合いでそう感じた。

 ──それにしても、あの佐川の奴には腹が立つな。
 今でも思い出す、初めて人に手を挙げた瞬間のこぶしの痛み。
 もう二度とあんな思いをしたくなかった。
 われを忘れた瞬間ってのは、ああいう時なのだろう。
 新井林に罵られたときも、本条先輩に殴られた時も、うっかり張り倒してもおかしくない精神状態だったのに、耐えられた。自分についてだったら何を言われてもしかたないと思えた。なのに、あの時だけは違った。図書準備室、という名の小さな部屋に一歩入った瞬間。佐賀はるみらしき髪型が影として映っていたのを見た瞬間。佐川が知らん顔をしてとぼけとおそうとしていたのを聞いたとたん。
 ──関崎がいなかったら、俺も青大附中から退学になってたな。
 
 あれから一ヶ月ほど。杉本の一方的な立場の悪化に比べて、佐賀はるみは評議委員に選ばれ、B組もいつのまにかまとまりが……杉本を除いて……出てきたとのこと。新井林に至っては、杉本が大人しくなったとたん上総への態度も一変し、ずいぶん先輩として敬ってくれるようになった。もしかしたら、自分の彼女が裏切りを働いたことに気付いているのではないかとも思う。本条先輩と新井林を相手に弾劾裁判された時も思った。否定してほしくて、助けてほしかったのではないかと。なんとなくだけど、上総はそれを感じていた。
 だから、徹底して知らないふりをした。なかったことにした。あのあと、新井林の前で上総が、二発本条先輩に殴られた時、心なしか頭を下げて涙ぐんでいたように見えた。本条先輩もあのあと、新井林がいなくなった後で、炭酸飲料を一本おごってくれた。
 ──立村、たった今から、俺とお前は先輩後輩じゃねえ。もう、ため年と同じだ。忘れるな。
 きっと、本条先輩も、上総の仕組んだからくりを理解してくれたんじゃないだろうか。そんな気がした。
  
 佐川雅弘はもう、表立って交流会には出てこない。
 関崎がその点は手を回したと話していた。
 でも、あくまでも交流会のみだ。個人での付き合いではわからない。
 佐賀はるみという女子も、簡単に引き下がるとは思えない。
 ゆえに上総は、このふたりをマークしつつ、情報を仕入れていた。幸い、関崎は何も考えることなく、ぽろぽろと最新情報をもらしてくれた。いい奴で、友だちでいたい奴。心苦しい。せめて、精一杯、自分の何かで返してやりたかった。青大附高へのチャンスを広げてやりたいと思った。そして願わくば、杉本梨南に、ほんの少しでも想いのきれはしを分けてやりたかった。
 一途に見つめて、甘えることができるのは、関崎だけなのだから。
 関崎にだったら、杉本は思いっきり泣くことができるだろう。
 上総にはできないことを、関崎はいくらでもしてやれるだろう。
 
 ──そのためにはどうしたらいいんだろう。
 まだ、答えの出ない、見えない問題。
 封をし、ポストに投函した。きっと休み明けには届く。
 ──封を切るまでには、なんとかしなくちゃな。
 少女らしいレースいっぱいの部屋の中、手紙の中身を広げ、抱きしめて身動きしない杉本梨南の姿を、雲の影から見つけたような気がした。作り上げることができるのは、上総ではなく、関崎だけだということも。
 


■「登場人物に捧げる50の質問」さまから質問データをお借りしました。多謝!■


 

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