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青潟大学附属シリーズ 番外編

真・家族〜妹という名のもとに

written by 舞夜じょんぬ

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「僕は妹のことが嫌いだ。そのことは頭に叩き込んでおいてほしい」
 すっかり縮こまった中学生ひとりを前にして、僕は言い放った。
「だから、君が行動した理由については、人一倍理解できるはずだ。安心して本当のことを話してほしい。もちろん、君を責めるつもりはない。それどころか、本音を言えば君を賞賛したいところだ」
 土砂降りの雨の中、呼び出した僕も僕である。彼……妹の元彼氏……を呼び出した理由というのはひとえに、母の頼みであり、本当だったら断ってしかるべきだった。振った相手にもそれなりの理由があるし、振られたからにはそれなりのわけが有る。特に妹の性格と行動パターンを考えると、男子としては苦痛極まりないという部分があるのではなかろうか。僕はいつも、妹と接するたびにそれを感じていた。だが、母にいくら説明したところで意味がない。ひとえに「あの子は口利けなくなってしまったのよ! どんなに傷ついたか、想像つくでしょ!」と言い張る一方。僕からしたら、単に妹の方が不必要な行動をとりすぎて、相手にうんざりされたただそれだけのことに過ぎない。口が利けなくなった、とは言うけれど本当にそうなのだろうか。狂言の可能性もあると、一切考えようとしない母と祖父の頑固さにはあきれ果てていた。
 しかたあるまい。長男として、義務は果たす。
 目の前の男子中学生は、無言でコーラのストローを口にくわえている。かばんをぶら下げ、ワイシャツの襟を半分開けている。襟元から白い丸首のシャツが覗いている。体型はごつく、いかにも運動部で筋肉を鍛えていそうに見えるのだが、前情報によると特別、そんなでもないらしい。クラスの評議委員を三年勤めており、うち二年は妹とコンビを組んでいた。自然、話も弾むようになり、いつしかお付き合いへの路へ、というのが流れらしい。もともと妹たちの通っている私立中学は、部活動よりも委員会活動の方が盛んらしく人間関係もそこから派生することが多いと聞く。
「すいません」
 やっと、一言だけ詫びの言葉を口にしてくれた。
 搾り出すように、咽を何度かくねらせるようにしてだった。
 そうとうしんどかったのだろう。妹がどういうことを彼にしたのかはまだ聞いていない。一方的に妹が彼にされたことだけは、母なり担任教師なり関係者なりからいやというほど浴びせられてしまったのだが。ただ、僕の中に響く真実は一つもないように思えてならなかった。もっと跳ね返すだけの何か、言葉を彼から聞きたかった。
「今、僕が知っていることを話すけれども、君の立場で間違っていると思うことがあったら、遠慮なく横槍を入れてくれないか。僕が聞いているのは、あいつを被害者ということで認識して、その上で展開されたことだけだ。そういうことは正直、聞き飽きてね。もう聞きたくないというのが本音なんだ。それよりも、本当のことを君の口から聞きたい」
 目を丸くして、口を尖らせている。うそつけ、と言いたいのだろう。
 それはそうだろう。世の中の常識によると、家族たるもの、特に「兄」と名のつくものは、「妹」をこよなく愛するものだと決められている。中には近親相姦という名前でもって、「禁じられた愛」などと揶揄するものすらいるくらいだ。実際、妹を持ってみればわかることだろうし、むしろ「愛」という名のプラス感情を持つことができるかどうか、それ自体が不可能なのではないか、と感じるのは間違っているのだろうか。いや、もちろん兄妹愛、という名の優しい感情が存在するのは理解している。家族愛、守りたいゆえの愛、それならば僕も理解できないところではない。単に僕は、そのようなやわらかでいとおしさ溢れる思いを、妹に感じたことがないだけである。
 そのあたりを理解させようとしても、目の前の彼には通じないだろう。とにかく、僕の方から一方的情報を並べることにしよう。
「つまりだね、僕が聞いたところによると、君は妹と中学二年の冬に交際を開始した。同じ評議委員同士、気心もしれて、それなりに恋愛感情も芽生えてきた。ところが、いろいろあって二週間で交際を解消した。確か、この時言い出したのは、君の方からだったね」
「……はい。俺が言い過ぎました。俺が悪いんです」
 うつむき、真一文字に口を結んだ。精悍な顔にうっすら汗がにじんでいる。クーラーが弱めに効いている店内で、相当神経に来ているらしい。
「彼氏になったから薔薇の花をプレゼントしてほしいとか、指輪がほしいとかさんざんねだられ愛想をつかした、というのがその段階での理由だったと聞いているが、その通りかな」
「……はい」
 顎で頷きまた唇を噛んだ。反省しているというよりも、思い出したくない、と言いたげだった。
「しかし、妹は君に心底惚れていたらしく、何度も交際再開を要求した。言い分によると『自分の悪いところはきちんとなおすから』と。それも本当かな」
「……はい」
 悪いところ、なんて簡単に直せるだろうか。妹のうっとおしいくらいのおしゃべりを直すことができたのは、彼の言葉だけだったと、あえて言おう。
「しばらく君は逃げ回っていたが、妹のしつこさは目に余るほどだった。とうとう君は別の女子と付き合い出したのに、さらに妹はちょっかいを出してくる。とうとう君は」
「あの、一つ違います」
 ドラ声で、彼は顔を上げた。
「ちょっかいというよりも、彼女は、クラスをまとめようと努力をしてくれたんです。ただ、俺の望んでなかったことだったって、それだけっす」 「クラスをまとめようと?」
 僕が問い返すと、彼は大きく頷いてガラステーブルのナプキン上にシャープで書いた。
 ──コネ入学。
「俺たちのクラス、A組と言って、周りではコネで入学したと言われてるんです。俺もすねに傷ある身だからしかたないところはあるんですが、彼女は精一杯A組がコネ入学者の集まりでないと、訴えてくれました。クラスの連中にも、A組としての誇りを持て、まとまろうと掛け声をかけてました」
「評議委員から降りた後にもか?」
 三年に上がってから……つまり彼と交際解消してから……妹は評議委員から降りた。雰囲気的に「降ろされた」という方が正しいだろう。しつこいくらい理想論・正論を言い張った後に、実際コネクラスなのにも関わらず「コネクラスでない」ということを訴えたというわけか。あいつのやりそうなことだ。正義がいかに人を傷つけるかきっと、あいつは理解していないのだろう。
「はい。けど、もう評議の女子は代わっているし、かえって彼女が手を出すとやりずらいとこもあります。だから、俺としてはできるだけ何も手を出さないでほしいと頼んだわけです。ただ」
 言葉を切った。またうつむき加減のまま、彼は両手をテーブルにつき、頭を下げた。
「もっと言い方があったのに、ひでえ言い方をしちまいました」
「何て言ったんだね」
「お前が手だしするとかえって迷惑だから、大人しくE組に引っ込んでろ、みたいなこと」 「E組?」
 現在、妹が「心の傷」を癒すために通っている特別教室のようなところだ。精神的に傷を持った生徒およびサポートが必要な生徒のための教室だという。妹は最初、下級生の面倒を見るため担任教師に頼まれて手伝いをしていたらしい。まさか自分がその対象者になってしまうとは思っても見なかっただろう。
「実際A組で、評議でもないのにいろいろ動かれると、せっかく新しい評議になっても誰も信頼しようとしないし、話も分散しちまうから、できれば向こう行っててほしくて」
「なるほどね、間口はひとつにしたいわけだ。わかるよそれは」
 僕もその辺は納得した。部活動およびサークル活動においてもそれは同じだと思う。船頭が多すぎると船は動かない。つまり妹は、新しい船頭さんに棹を渡したにも関わらず、私が私がとばかりに指図し始めたのだろう。相手としたらたまったものでない。思わずコンビの彼が注意しても当然のことだ。安心させるための相槌を打ち、僕は話を続けることにした。
「その後、君はあまりにもしつこい妹に対して、最終手段を取った。それが五月の中旬だったかな」
「修学旅行までにははっきりさせておいたほうが、お互いのためだと、俺、思ったんです」
「その通りだな、僕もそれは思うな」
「けど、あんな傷つくとは、俺、思ってませんでした」
「口、利けなくなったことかい」

 やさしく、責めないように、心遣いが必要な場面だろう。僕はもう一度作り笑顔をこしらえた。大切な妹を傷つけた悪い元彼。目の前の本人はきっと、追い詰められた思いでいるだろう。ごもっともだ。わからなくもない。ただ、妹はたっぷり返り血を浴びせたというだけだ。 「今のところはうちでも全然話をしないが、たぶん大丈夫だろう。女性というのはだね、特にうちの家系の女というのは、感情豊かに男をたぶらかすのが得意なんだ。不思議なもんでね。あいつの母親も同じ手口を使うんだ。傷ついたら目の前の相手が罪悪感を感じずにはいられないように、泣き喚いたり口を利かなくなったりとかだな。なんどかそれを見ていると、僕としては一発で見抜くことができるようになった。傷ついた、傷ついた、と嘘泣きを繰り返すうちに、もう免疫ができたというのかな。僕からしたらあいつの行動は、どうみても君に対するあてつけだ。本人が気付いているかどうかわからないけどな」
「けど、口利けないのは確かだし」
 彼の落ち込み方は痛々しいくらいだった。僕が男だからつい、感情移入してしまうというのもあるだろうし、先日、童貞喪失のあおりを受けて、女性への夢が少々しぼんだというところもある。愛情の押し付けにうんざりして、なんとか手厳しく振って忘れさせようとした、その気持ちはよくわかる。男性だったらそのあたりの心理は当然のものと思う。情けをかけて、「もしかしたら」と意味のない期待を抱かされるのはごめんだ。しかし、妹の性格は彼も読めなかったらしい。ありとあらゆる「努力と根性」によって彼は振り回され、とうとう最後の切り札を出さざるを得なかったという。
「最初から、君はあいつが大嫌いだった、そう言ったんだな」
「テープ、あります」
 ご丁寧にも、彼はカセットテープにその会話を全て録音し、一本を妹に、もう一本を自分用に保管したという。内容を僕も聞かせてもらったけれども、確かに彼はかなりきついことを言っている。これだけ言われたら逆恨みされてもしかたないだろう。
「入学時から妹に対して、嫌悪感を感じていた。それはわかる。だがしかし、君の場合は宗教的事情から、『嫌いな人間に対してこそやさしくせよ』という倫理を守らねばならなかった。これは人間として当然といえば当然だ。昔からイエスキリストも言っているな。「なんじの敵を愛せよ」と。だが、『愛』にもそれぞれ種類があるわけで、『友愛』『クラスメート愛』そのあたりで終わらせればよかったところが、妹はそれ以上のものを求めようとした。見極めきれなかったうちの妹にすべて咎があると、僕は考えるね」
 誰一人、彼の味方となってくれなかったのだろう。
 でも、誰よりもその言葉がほしかったのだろう。
「ごめんなさい」
 もう一度謝った。それが口先だけのものでないと、僕はよく理解しているつもりだ。
「それでも妹はあきらめず『嫌いにだけはならないで』と泣き喚かれた。こういうのはしんどいな。これだけ言わねばならない相手の気持ちを一切察しない、うちの家系の女。俺としては君がぎりぎりまでがまんしてくれたことに感謝こそすれ、責めることはできない。その後でたとえ、妹が口を利かなくなったとしても、それは君の罪ではないよ。また演じて君の気を惹こうとした、妹が責任を負うべきだ。だから僕は君を責めるためにここに来たわけではないんだ」
 珈琲のお代わりを頼んだ。
「君も、どう?」
「いえいいです」
 遠慮したいのはわかる。だが、おごってやりたかった。アップルパイが非常においしいことで有名な店だ。自分の分を注文し、あとで半分分けてやろう。ウエートレスに声をかけた。

「今のところ、僕としては次のように考えている」
 目がうつろで、せっかく分けてやったアップルパイも手つかずのままだ。
「今回、この問題を大きくしているのは、うちの妹があれから一切口を利かなくなったということだ。あえてここでは『利けなくなった』とは言わない。断言は出来ないが、『利かなくなった』んだ」
 このあたりを強調した。
「幸い、あいつの新しい彼氏……君があいつのために見繕ってくれたらしいよな……のお父上が色々手をまわして、いいお医者さんを紹介してくれた。しばらくは通うことになるだろうが、なにせ本人の意思で口を利かないんだから、医者がどうこうできるという問題ではないな。君への風当たりが強いのは、申しわけないがもうしばらく辛抱してくれ」
 事務的に話すよう心がけた。自分の方からさっくりパイを食べた。
「もちろん君に対して、うちの母および祖父の持つ印象はいいものではない。できればこれっきり、触らぬ神にたたりなしで通してほしい。だが問題は君の方だな。妹と顔を合わせるたびに罪悪感に満たされるのは、さぞやしんどいことだろうよ。僕としてはそれをできるだけ軽くしてほしいと願うばかりなんだ。いいかい、君がとった行動は、決して第三者には理解してもらえないものだろう。だが僕も同じ立場だったとしたら、きっと同じこと、いやもっとそれ以上のことをしたに違いないさ」
 信じられない、と言いたげだ。無意識のうちにフォークが動いて、アップルパイを口に入れようとしているのだが、その手は鼻先を直撃していた。
「君の希望としては、妹が一切、君にかかわりを持とうと思わないでほしいということだな」
 身動きしていないのは、おそらく図星を差されたからに違いない。
「できれば、いじらしい目で『お前が悪い』と言いたげな態度を取らないでほしいということだな」
「けど、俺が悪いから」
「先輩の言うことはちゃんと聞けよ。いいか、僕としては、君にこれ以上妹が迷惑をかけるのを避けたい。幸い、妹には君が用意してくれた後釜がいる。本人がどう思っているかはさておいて、彼も、惚れぬいているみたいだしなあ」
 初めて、彼の表情がほころんだ。
「一年の頃からあいつ、ずっと、彼女のことを命がけで好きだったっすよ。俺たちも、うん、うちの男子連中みな見てわかってたんじゃないっすか」
「まあな、下着ドロに惚れられて嬉しい女子も少ないがな」
 嫌味に聞こえているだろうか。妹のことだと言葉にベールをかぶせるくせに、新しい彼氏のことになると生き生き話すのはなぜなのだろうか。彼は確か、評議委員と聞いている。クラスの中で浮いている奴を面倒みたいタイプなのかもしれない。やはり、結構いい奴なのだ。
「だから、もし、俺がひどいこと言って傷つけても、あいつがいればきっと、彼女は歩いていけるんでないかって、俺なりに考えたんだけど、やっぱ猿知恵だったっすか」
「そんなことないよ」
 僕は繰り返した。
「そんなことないさ。それどころか感謝しているよ。君はさ、うちの親たちがもくろんでいたことを見事やってのけてくれたんだ。知っているかい?」
 含み笑いしつつ僕は、匂わせてみた。やっぱりひっかかってきたのは、中学生と高校生との差なのかもしれなかった。上半身、少し腰が浮いた。そこを逃しはしない。
「うちの妹はあれでも、学校の成績はよかったので受験で合格することもできたはずなんだ。だけど僕が四年前に落っこちているもんだからね。親としては心配だったんだろう。それに縁故入学枠に入れば、君の言うとおり縁故入学専用クラスに振り分けられるわけだ。そうなると必然的に資産家の息子、有名人の家庭のご子息などなどに出会えるはずだ。つまり、親としてはできるだけ早く、あいつにいい婿さんを選んでもらい、大学卒業と同時に嫁入りしてほしいとたくらんでいたわけさ。全くな。本人は相当縁故入学が悔しかったらしい。入学してから縁故クラスの人間であることを馬鹿にされたくないと思ったらしく、毎日ガリ勉していたようだけれども」
「うそお」
 それは驚くだろう。彼も一応は縁故入学者のはずだ。情報によると、著名な書道家の孫というのと、某新興宗教との繋がりなどもあって無事入学したのだと聞いている。もっとも、新興宗教の方は中学二年の段階で家族ともども脱退したという。その後、いろいろな問題が噴出した団体だったので、ちょうどいい時に足を洗ったと言ってよいだろう。
「本当だよ。つまり、祖父と母にとって見れば、青潟の名士でかつ有名会社の御曹司を連れ込んでくれた以上、言葉がしゃべれなくなったことくらい、たいしていうこともないさ。本音を言わせてもらえれば、あいつが一言もしゃべらなくなったおかげで、本当に家は静かになった。居心地よくなった。君には感謝してもしきれないくらいだよ」
 僕の言うことを百パーセント信じているかどうかはわからない。仮にここへ、妹が現れてヒステリーを起こされたとしても僕には言い訳ができる。
「お前のためだよ。お前が苦しんでいるのを見てさ、やりきれなくなってお前の元彼に聞いていたんだよ。けれども怒ったってしょうがないだろ? むしろ、お前が悪い君は悪くないという切り口で話せば、いくらでもしゃべってくれるんじゃないかと思ってさ」
とか言えばいい。うちの血統の女性はそんなもんだ。頭が悪い。
「だから兄としてはだね、あの元「下着ドロ」御曹司と妹の仲がもっと進展するように、全力あげて応援したいと思っている。すでに祖父の繋がりでいろいろと家族ぐるみの付き合いにつなげようとしているようだしね。夏休みには、御曹司の実家へ一週間旅行しようと言う話もあるらしい。変な話だけれども、もしふたりが乳繰り合ってガキが出来たとしたら、すぐに籍を入れる準備をしてもいいくらいなんだ。あとは彼に頑張っていただくだけなんだが、御曹司、ずいぶん性格が幼いというか、愛すべき人物というか」
「ああ、それわかります」
 二人笑いあったのは、今、これが初めてだった。
「いきなり、玄関に土下座して妹のことを『大好きです!』と言うんだぜ! うちの爺さんもなあ、あれで一発、おちたぞ。『あの子は将来大物になるぞ』と家の奴にも話していたしなあ」
 僕としてはその辺理解できなくもない。父や僕を評価してくれていないあの祖父が、あの御曹司には評価が甘い。むかつかなくもないのだが、それでも許せてしまうところが御曹司君にはあるのも事実。妹よりも彼の方に僕は応援旗を振りたい。もし結婚披露宴が行われるとしたならば、ぜひ僕は、御曹司側の知人として参列したい。まかりまちがっても妹の親族として参列客にビールを注ぎまくるようなことはしたくない。
「あいつ、そんなことしたっすか!」
「ああ、あれビデオに撮っておきたかったな。おもしろい」
 しばらく僕と彼は、例の御曹司について語り合った。一年の時なぜか、女子更衣室から下着を盗むという罪を犯してしまったゆえにクラスからハブにされたらしい。そんな彼を何とか仲間にしてやろうと努力し、妹への愛につなげて彼を立ち直らせようとした、それのどこが間違っているというのだろうか。
 もしかしたら、話をしているうちに妹がかわいそうだと思うかもしれない。
 どこかで恐怖していた。
 そんなことは一切なく、僕と彼との会話は終了した。彼の本心は妹の今後よりも、例の御曹司がちゃんと、男としてやっていけるかどうか、という一点らしかった。つまり、妹は御曹司以上に関心もたれてもいないというわけだ。
 愛の反対は無関心。よいことだ。

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