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〜青潟大学附属シリーズ・二次創作小説〜
芙蓉 雅作
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 ──今の、ゆいちゃん?
 水飲み場で水を飲んでいたあたしの脇を、親指姫みたいに可愛い少女が走っていった。泣いていたのはたぶん、あたしの見間違いじゃないだろう。すぐに彼女の後ろを追っかけた。
「どうしたの? ゆいちゃん」
 はあはあとC組の窓際で荒い呼吸をしている彼女に、あたしはそっと声をかけた。教室には今、誰もいなかった。
「べつに、なんでもないの」
「なんでもないって……でもほら」
 ぐいっと手のひらで頬の涙をぬぐうゆいちゃんに、あたしは水玉模様のハンカチを渡した。 「……ありがとう」
 ためらいがちにハンカチを受けとり、ゆいちゃんはそれで頬や目頭のあたりを拭いている。 「どうかしたの? こう言っちゃなんだけど、なんだか怖い熊にでも襲われて、逃げてきたって感じ。まさかとは思うけど、難波くん?」
 こっくりと頷くゆいちゃん。一体、どんなことを彼女にしたのだろうと思い、一瞬はらわたが煮えくり返りそうになる。
「近江さん、この間言ってたよね? 難波はあたしのことが好きなんだって。あれってほんと?」 「ええ、そうよ」と、あたしはしぶしぶ頷いた。「あたし、フェアじゃないのは好きじゃないから、そこのところだけははっきりさせとくわね。難波くんは霧島さんのことが好き。わたしもゆいちゃんのことが好き。そんでもってゆいちゃんは右と左どっちを選ぶか、それとも全然別の誰かを選ぶのかってことよ」
「そんな……あたし、どっちも選べないよ。近江さんのことは友達として好きだし、南蛮漬けのことは……べつになんとも思ってないもの」
 ハンカチを四角く折りたたんで返すゆいちゃんに、あたしは「そう」と頷いてそれを受け取った。 「じゃあ、こういうのはどう? これからあたしと難波くんとで、一週間交代でデートするの。それでゆいちゃんがどっちにするか決めるってのは? もちろんドローっていう結果もありっていう前提でね」
 潤んだ瞳で瞬きしながら、きょとんとしているゆいちゃん。とても可愛い。食べてしまいたいくらい。
「でも、そんなの……」
「難波の奴にはあたしからそう伝えとくわ。それに、どっちが先にゆいちゃんとデートするのかも決めなくちゃ。あいつ、今どこにいるの?」
「たぶん、視聴覚室……」
 あたしは善は急げとばかり、視聴覚室へと向かった。一体あいつが何をしてゆいちゃんを泣かせたのかも知りたかったし、返答いかんによっては一発しめてやるつもりだった。



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