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〜青潟大学附属シリーズ・二次創作小説〜
芙蓉 雅作
■──4──■



  


     4 

 ──うう、寒いっ!
 なんだってこんな寒い日に、裏庭なんかにいかなきゃなんないのよ。もしつまんない用だったりなんかしたらあいつ、口で殺してやる。
 ──ああ、いたいた。あれ? 何故か近江さんも一緒だ。しかし、一体なんなのかしら。人差し指で人を差すのはやめろっつうのよ、まったく。
「……俺と近江がこれから同時に告白して、あいつに選んでもらうってことだよ」
 ──なに? 告白?
「よし、今の聞いてたな、霧島。じゃあ後はふたりで話しあえ」
 脱兎のごとく走って逃げる難波。何がなんだかさっぱりわからない。
「はっくしょい!」
 近江さんが身震いと共にくしゃみをひとつする。
「ぶあっくしょい!」
 何故かあたしも伝染したみたいに、大きなくしゃみがひとつでた。お互い、フリースやパーカーの襟元をかき合わせながら、
「一体なんなのよ、あいつ」
 思わず同時に言葉がでた。そしてあたしと近江さんは、顔を見合わせて思わず笑った。

「え? それほんとなの?」
 あたしと近江さんは帰り道、肉まんをふたつ買って、それを一緒に食べながら話をした。 「そうなの。あいつはゆいちゃんのことが大分前から好きなのよ。なんていうのかしらねえ、好きな女の子のスカートめくりをするタイプっていうの? さっきのこともそうだけど、難波くんてまだ、まるっきり子どもなんだと思うわ」
「でも、ということはつまり……」
 あたしは隣の、背の高い近江さんのことを一瞬振り返った。ゆいちゃんって初めて名前で呼ばれた。そんでもってなんなの!? この胸の鼓動のときめきは!? 「霧島さんはどうなのかしら? へえ、近江さんってそういう趣味だったんだあっていう感じ? それとも……」
 じっと、大人びた眼差しを向けられて、あたしはぎゅっと胸が詰まりそうになった。こんな綺麗な人に正面から好き、なんて告白されたら……誰だって悪い気、しないんじゃないだろうか。仮にたとえ相手が同性であったとしても。
「いいのよ、無理しなくて」近江さんはさらっと言う。「ただあたしは自分に嘘がつけないだけなの。確か二週間くらい前だったかな。夢にゆいちゃんがでてきたのよ。それで『一緒におねんねしましょう』って、あたしのことを誘ったの。ふと気づくとあたしも下着姿でね、ふたりで天蓋付きの豪華なベットに横になってて……お互いのシルクの下着がこすれあって、とっても気持ちがいいの。そこで、目が覚めたってわけ」
 近江さんはコンビニの前にある自販機のところで、午後の紅茶を買った。もちろんホットだ。そしてフタを開けて一口飲むと、
「よかったら、どう? もし嫌じゃなかったら、だけど」
 あたしは百合とかなんとか、そんなことは関係なしに、近江さんから喜んでそれを受け取って飲んだ。寒さのせいか、いつもの二倍くらい美味しく感じられる。
「本当に可愛いわ、ゆいちゃんって」
 うなじのあたりに、近江さんの冷たい指が触れて、一瞬びくっとした。可愛い、なんて言われて嬉しかったことなんてなかったけど……でも今は。
「あたし、できれば近江さんみたいな容姿に生まれたかったな。男装の麗人みたいに格好よくて、変に馬鹿な男子が寄ってこないの。そうしたら……」
「そうしたら?」
 近江さんはあたしの手からレモンティーをとると、それをまた一口飲んで、あたしの手のひらに返した。あたしはもう一度、それを飲む。
「ごめんね、近江さん。バスがきちゃった。それじゃまた明日!」
 あたしは午後ティーを近江さんに手渡し、急いでバス停へと走った。本当はもっと、彼女と色々と話したい気もしたけど……完璧に気持ちがぐらついている自分にびっくりして、逃げるようにバスに乗るしかなかった。


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