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〜青潟大学附属シリーズ・二次創作小説〜
芙蓉 雅作
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「これって絶対、不利だよな」
俺はつい、独りごちてしまった。隣に座っていた更科が「ああん?」と不可解そうに眉根を寄せる。
「お前、時々独り言いうその癖、直したら? 相手が俺だからいいけど、ぶつぶつ言ってるその姿、他の奴が見たら絶対変だと思うぜ」
「そうかもしれん」
評議委員会の間中、俺はどこか虚ろにぼおっとしていた。本当のところ、親友の更科にしゃべりたいのは山々だ。いや、でもしかし……。
「まあ、しばらくは放っといてやれよ」
どことなく訳知り顔の天羽がぽん、と更科の肩を叩く。そうだ、こいつは近江とつきあってるんだ。なのに何故。
「難波よ、お前の言いたいことは俺にはよおおっくわかってるぜ。これから、男ふたりでサテンにでも入って話しようや」
「俺だけのけもの?」と、更科が自分の顔を人差し指で差す。軽く顎をしゃくる天羽。
「難波がいいっていうんなら、俺は更科が一緒でも全然かまわんけども」
俺は、無言で頷いた。評議委員長の立村は、相棒の清坂氏と何か話しこんでいる様子。そして近江と霧島は……ついこの間までの険悪なムードもなんのその。時々、顔を見合わせて笑ったりなんかしている。ちくしょう、気に入らねえ。
バキッ!と思わず俺がHBの鉛筆をへし折ると、「痛いっ!」と何故か更科が鉛筆の気持ちを演じている。まるっきり人ごとのように笑う天羽。一体どういう神経してるんだろうか、こいつ。自分の彼女が他の女といちゃいちゃしてるっていうのに。
「つまり、近江は最初からそれ系だったってことか?」
「まあ、そゆこと」
驚いている更科に、天羽はなんでもないことのように相槌を打っている。
「ふうん、でももしそうならさあ、最初に気があったのはまず間違いなく清坂さんだよな。修学旅行の時とか、意味もなく手を繋いだりとかしてたじゃん」
「まあな」と、天羽はコーヒーを一口飲みながら言った。「でも修学旅行後に気持ちが変わったんだと。なんだっけ……ええと、天蓋付きのベッドに下着姿で霧島と寝てる夢を見たんだってさ。そんですっかり気持ちが変わってしまったと。まあ彼氏つきで望みのない清坂ちゃんよりは、望みあるよな。霧島って完璧フェミストだし」
「おまえは……それでいいのかよ」押し殺した声で、俺はむっつりと聞いた。コーヒーをブラックでぐびぐび飲む。もうすっかり冷えてるので、喉が焼ける心配はない。
「だから、言ったろ? 最初からそうわかっててお互いつきあってるんだって。そうだなあ。俺の希望としてはさ、これから近江ちゃんが手痛い失恋でもして、慰めの欲しい時に俺の胸に……ってとこかな」
「でも、このまんまキリコと近江さんがうまくいったらどうするわけ? 天羽も難波も、男の出る幕まったくなしじゃん」
童顔のくせに、更科は鋭いところを突いてくる。でもコーヒーはミルクたっぷり。辛党の俺にはとても信じられん。
「まあ、そこなんだよなあ」ドーナツにかぶりつきながら、天羽が頷く。「俺としてはこれから難波にがんばってもらいたいわけだ。愛しのゆい姫を我が手中に。おお、ジュデーム」
「なあにが、愛しのゆい姫だ。あいつが、そんなしおらしい玉かよ」
更科は笑ってたけど、俺はあくまでも真顔だった。別に俺が欲しいのは、そんなあまあまな関係ではない。本当は、今までどおり喧嘩ばっかりでも全然かまいはしないのだ。でももしあいつが他の男(もしくは女)のものになるとしたら……。
俺は意味もなく、空になったコーヒーカップに砂糖をざらざら注ぎ、さらにその上から醤油をぶっかけ、さらにタバスコをどぼどぼ入れた。
「まさに今の難波の心理状況そのものだな、それ」
コーヒーカップをスプーンでかき混ぜていると、天羽がけたけたと笑いだす。更科が隣から、さらにミルクをたっぷり入れてくる。店員さんにこんなところを見つかったら、きっと大目玉だったろう。